久しぶりのニュースコーナーです。
レコードは音が良い!レコードブーム到来!など騒がれ始めてからかなり時間が経つが、その勢いたるや衰え知らず。これは本物と思わざるを得ない状況である。
確かにレコードは音が良いがしかるべき装置で再生し、しかるべき環境で聴いて初めてその良さがわかるのであって、誰も彼もがレコードの高音質を享受できるわけではない。
その点デジタル音源は大変便利かつスマホなどそれなりの再生環境でも高音質が享受できるので、レコードよりも高音質と感じる機会は圧倒的に多いだろう。
何が言いたいか?レコードを最高のシステムで再生し最高のシステムでデジタル化することで、レコードの高音質とデジタルの利便性がダブルで享受できるということ。
2013年からのシステム構築
その最高のシステムを構築し始めたのは忘れもしない2013年2月だ。
(上記画像は2012年頃のとりあえずの録音環境)
Antelope AidioのEclipse384というハイエンドAD/DAコンバータ(アナログをデジタル変換する機器)を導入したのが最初である。
現在2024年9月時点AD/DAコンバータはロングランヒットのAntelope Aidio AMARIを使用。最高のAD/DAコンバータである。そして昨年2023年より順次レコードプレーヤー周りの刷新開始。まず別置型トーンアームViV laboratory Rigid Float/CB13MC導入、続いて昇圧トランスEar MC4導入、そしてメインであるレコードプレーヤーTechnics SL-1000RカスタムとトーンアームGranz MH-1200Sおよび5din→rcaフォノケーブルAcoustic Revive PHONO-1.2TripleC-FM導入後、最終段としてフォノイコライザーViolectric PPA-V790導入し現在に至る。
ダンスミュージックのこだわり
これらシステム変更に伴う音質変化につてレビューしたいと思う。特に当ラボがこだわるダンスミュージックのデジタル化と新システム導入後の音質変化について触れたいと思うが、その前になぜダンスミュージックのデジタル化にこだわるのかについて触れておこう。
ニュースコーナーや雑感ブログでたびたび触れているが、80年代当時ディスコでDJをしていたことがきっかけで、2005年辺りから現在に至るまでディスコイベントでDJする機会が増えてきた。当DJスタイルはハードの技術進歩により変化しており、初期はレコード、次にCDJ、次にPCDJ、そして現在はPC不要のオールインワンDJ機材とwav音源(ハイレゾ)のみでプレイするスタイルに落ち着いている。ちなみに2007年辺りからPCDJに切り替わるのだが、当時は周りにPCDJはおらず独りM-AudioというメーカーのTorqシステム導入をきっかけに完全にPCDJに移行した。操作性含め移行はスムーズだったが音質差に苦しめられた。
録音機材とソフトの見直し
CDからリッピングした音源とレコードから録音した音源との音質音圧差が歴然で、更にCD音源も質感が様々でスムーズなDJミックスの妨げとなった。特にレコードをデジタル化した音源とCD音源の差が顕著で、録音機材やソフトを見直すきっかけとなった。
DJたるもの選曲が最重要だが、選曲が良くても選んだ曲の音質が悪ければオーディエンスの楽しさも半減、DJの士気も下がるというもの。最高の選曲と最高の音質でDJとオーディエンス共々楽しむため、いかに高音質でレコードをデジタル化するか!ここからこだわりの高音質探求が始まりレコードデジタルラボの礎となったわけだ。
(上記画像は2017年頃のレコードデジタルラボ開始前の録音環境)
理想の音を求めて
高音質探求プロセスについては紆余曲折あり過ぎるので大きく割愛するが、過去ニュースコーナーや雑感ブログを参照いただくとして早速本題に入ろう。前置きが長くてすみません。
私の望む音はダンスフロアで大音量再生に耐えなおかつ高音質で疲れ知らずの音である。この音を求め過去数々の機材を使い最終的に前述の機材にたどり着いた。
前システムより作成されるダンスミュージックの音源と、現システム音源との音質差は僅かだが後者の方が明らかに音の輪郭が明瞭になり瞬発力が増したように感じるのだ。時にはスピード感すら感じることもある。物理的にレコードプレーヤーの回転数を上げない限り音楽のスピードは速くならないのだが、、、いやいやそんなことではなく。ダンスミュージックの抑揚や疾走感など、音質以外で感じる部分が加わったとでも言いますか、とにかく聴いてて楽しいのである。
コレ、大音量でダンスフロアで聴いたら「下半身モヤモヤ」「みぞおちワクワク」「頭クラクラ」状態に陥ること想像に難くない!である。
僅かな音質差ではあるが、細かなことの積み重ねで得られる高音質化に大きく貢献しているのは、上記機材のどれに当たるのか?恐らく全てだろう。
Technics SL-1000R:ヘビー級のステンレス筐体部、およびターンテーブル回転部の安定感、および静寂性。
Granz MH-1200S:トーンアーム機構から繰り出される立ち上がりの良い音、精巧なベアリング機構による安定したトレース能力。
ViV laboratory Rigid Float/CB13MC:オイルフロートによりインサイドフォース音質劣化が最小限かつ安定したトレース能力。
Ear MC4:MCカートリッジのポテンシャルを最大限引き出すクオリティかつ圧倒的な高S/Nでレコードの再現性を高める。
Violectric PPA-V790スタジオクオリティの癖のないピュアサウンド、レコードの再現性重視、ローノイズかつ歪み無しのハイクオリティサウンド。
これら機材をつなぐケーブル類は信頼のAcoustic Revive製品と、まさに実質剛健正確無比という言葉がピッタリなCross Point製品を採用。
そして最終系のシステム構築へ
このシステム全体の相乗効果として高音質化が図れ、振動や歪を限りなく排除しレコード本来の音が正しく再現されることで、ダンスミュージックの持つ抑揚や疾走感が音源に反映されたと理解する。特にダンスミュージックはリズムが重要でドラムはもとよりアタックの強いパーカッションが多用される楽曲が多い。
アタック強めの音は波形が尖っておりその先端が鋭いほど音が明瞭である。前奏や間奏部に限ってはこのパーカッションがメインとなる箇所であり、音の隙間(音と音の空間)がより多くなる箇所でもある。パーカッシブなリズム音の周りや空間内に付帯音や歪、いわゆる雑味が現れると重要であるリズム音の明瞭度がわずかに落ちてしまい、抑揚や疾走感も控え目となるやもしれない。
以前レコードプレーヤーはTechnics SL-1200GAE(以下GAE)を使用していたが、使うレコード針によってインサイドフォースに伴う内周の歪みが顕著に表れることが多々あり、トーンアームを見直すきっかけとなってViV laboratory Rigid Float/CB13MC(以下ViV lab)を導入するに至った。このポイントはとても重要で導入前と導入後の音質は大きく変化した。内周歪みが大きく軽減したことに加え、カーボン製のトーンアームとオイルフロートのおかげか、音の輪郭が明瞭となりトータル的な音質アップが図れた。音が明瞭となったおかげでカートリッジやフォノイコライザーの音質の違いなども分かりやすくなった。
機器の相乗効果は間違いないが、トーンアームの影響が占める割合は大きい。Granz MH-1200Sしかりである。別置型とは違いレコードプレーヤーの筐体にがっちり固定するタイプで、なおかつメインパーツは全てステンレスである。これもまさに実質剛健を具現化したような製品であり、スピード感に加え音楽を緻密に積極的に聴かせるタイプのトーンアームで、サウンドステージの広さも魅力の一つである。ステンレス製SL-1000Rの筐体に固定されることで一体感が生まれ、SP-10R(ターンテーブル部)ヘビー級高性能ターンテーブルの安定した回転により、余計な振動が極限まで抑えられた音は良い音でしかない^^。
一方GAEとViV labコンビとSL-1000RとViV labコンビの違いも明らかだ。ViV lab別置型トーンアームは独自開発の磁気オイルにトーンアームが浮いている唯一無二の機構。オイルにトーンアームを浮かせることでメカニカルな接点は必要最小限となり、振動はオイルが吸収するので余計な振動が抑えられ、ハウリングマージンを稼ぐことができ、内周歪みによる音質劣化が少ないという至れり尽くせりの製品だ。筐体と一体ではない別置型アドバンテージは皆無と言っていいだろう。それに加えヘビー級SL-1000Rの安定感が加わわればGAEコンビとの差はいわずもがなである。
ちなみにGranz MH-1200SとViV labはMade In Japanであり、音は同じ傾向と感じる。情報量が多く解像度が高い、歪み付帯音が少なくトランジェントが良いなど、両製品とも大変優れているが、当ラボではケースバイケースで使い分けている。ダンス系12インチシングルはMH-1200Sを使用。7インチシングルやLPはViV labを使用。基本的にメインはMH-1200Sだが、内周劣化が気になる場合またはその恐れがあるものはViV labを使用するイメージだ。Granz主催者曰くMH-1200Sのインサイドフォースキャンセル機構とアームリフター機構を、取り外したほうが音が良くなるとのことなので現在外している状態。
フォノイコライザーの影響力
さて、機材変更に伴う高音質化について、トーンアームとレコードプレーヤー本体の影響力について書いてきたが、最後に導入したフォノイコライザーViolectric PPA-V790(以下V790)の影響力について書いてみよう。
フォノイコライザーはFIDELIX LEGGIEROとViolectric PPA-V600がとても優れた製品だったので、変更するつもりは毛頭なかったが、過去(2022年)デモ試聴済みのV790がどうしても気になり、現環境でV790を試したい衝動が抑えられなくなり懇意代理店よりお借りした。
MCとMM切り替え、入力ゲイン切り替え、出力ゲイン切り替え、入力インピーダンス切り替え、入力キャパシティ切り替え、RCA入力3つ、XLR入力3つ、RCAおよびXLR出力、様々な環境とカートリッジに適応するフォノイコライザーで性能的に申し分ない。早速リアルタイムレコード試聴するも(MCカートリッジ)、過去最大の衝撃が。。。。LEGGIEROとPPA-V600の更に上を行く音質に驚いた。クリアさがまるで違う。
一聴してわかるのは解像度の高さである。
高域の抜けが良い、きつくない、澄んだ中域、エッジの効いたビート、タイトでありながら量感充分の低音、、、。驚愕である。続いて昇圧トランスEar MC4介し試聴したが、さらに音の輪郭が明瞭となった。続いてMMカートリッジSumiko Amethystで試聴したが、これも相当音が良い!MMのパンチ力に加え解像度高くDJコースにも問題なく使える!同じくMMのDJカートリッジORTOFON Concorde MkII CLUBも試聴したがこれまたすごく良い!!!
DJコースMCカートリッジでデジタル化した音源は、ハイ上がりで箱鳴りの際にわかに痛く感じるケースが稀にある。指摘のあった顧客ユーザー様にはMMカートリッジで録音したものを提供するようにしているが、V790でMM録音したものは特に喜ばれそうだと感じた。
(現在はV790+MMカートリッジ使用で納品対応中)。
続いてFIDELIX LEGGIEROとViolectric PPA-V600で録音したハイレゾファイルとV790のファイルで比較した。DAWソフト上に3つの音源を並べ、ミュートとソロで切り替えながら比較した。
余談だがPC画面をスマホ上で操作できるAnyDeskというソフトを使ってベストポジションで試聴した。大変便利なソフトで重宝する。教えていただいたNさんに感謝。
比較試聴の結果
さて、話を戻そう。
比較試聴の結果だがリアルタイムリスニングより明確に違いを感じることができた。メインはMCカートリッジ→Ear MC4→V790音源。これと比較するのはMCカートリッジ→Ear MC4→PPA-V600音源、MCカートリッジ→Ear MC4→LEGGIEROだ。
前述の通り解像度の違いは明確で、付帯音の少なさからか非常に雑味無いクリアーなサウンドが印象に残った。クリアでありながら低域もしっかり出ており、中域や高域も低域にスポイルされることなく全体のバランスがとても良い。Ear MC4→V790音源の圧勝だ!前述の毛頭ないは完全に覆った!
以上長々書いてきましたが、各機器変更に伴いそれぞれ相乗的な音質底上げにつながったことはご理解いただけたと思います。
また、ダンスミュージックのレコード、こと12インチシングルは特に音が良く、ダンスフロア大音量再生前提としたならば、音質検証の一素材として取り上げたこと、そして自身のDJ活動の礎となった、いかに高音質でレコードをデジタル化するか!への取り組みと音質へのこだわりも合わせてご理解いただけたと思います。
機材選定紆余曲折ございましたが、ようやく納得の環境が整いました。
デジタル化の基本となる初段の録音は最重要です。当ラボ全コースてにおいて使用する機材変更に伴い、全体のクオリティアップが図れたことをご報告いたします。ダンスミュージックに限らず、いかに高音質でレコードをデジタル化するか!今後もブレることなく良い音を追求して参ります。
現在の所有音源に不満があるDJさん、レコード持っているが再生環境が無い方、レコードデジタルラボがより高音質かつ便利なデジタル音源作成をお手伝いいたします。
是非ご利用ください。
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