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アウトボードを試す

Crane Song / HEDD Quantum

さて、本日は久しぶりに機材比較試聴の投稿です。早速進めていきますが、まずデモ機の紹介を簡単に。

Dangerous Music CONVERT-AD+
Dangerous Music CONVERT-AD+
Crane Song / HEDD Quantum
Crane Song / HEDD Quantum
SSL FUSION
SSL FUSION

上からADコンバータDangerous Music / CONVERT-AD+、ADコンバータCrane Song / HEDD Quantum、アナログアウトボードSSL / FUSIONである。相変わらず写真が下手で恐縮です。

どのような機器なのか、ごく簡単に触れておこう。

まずDangerous Music / CONVERT-AD+(以下AD+)は、アナログをデジタルに変換するコンバータで、変換の際音に厚みを加えるトランスフォーマースイッチと、X-FORMERといわれるEQとコンプレッションが複合的にサウンドに影響を与える機能が搭載されたモデル。

次にCrane Song / HEDD Quantum(以下HEDD)は、アナログをデジタルに変換するコンバータで、変換の際音に厚みを加える三極管および五極管、アナログ テープ エミュレーションDSP機能を搭載し、さらにマスタークロックとしても機能するモデル。

続いてSSL / FUSION(以下FUSION)は、アナログソースへの色付けや重み付け、空間の付加といった音質や音色に変化を加える、いわゆるアナログアウトボードで、6つのアナログツールを搭載したモデル。

これらの3モデルは当ラボでどのように使うのか?レコードのデジタル化の際、ソースに脚色を施すため。あるいはデジタル化後に脚色するため。まあ色々用途は考えられるが、今回前者のデジタル化の際脚色する用途に絞って試してみた。いわゆるかけ録りというやつだ。レコードソースは完成系なので、極端なEQやコンプ設定は必要ないが、程よく調整することで良い結果となることは経験済み。

当ラボ業務限定と前置きした上で、なぜかけ録りするのか?このクエスチョンの回答については後述するが、現状メイン業務の一つに、レコードCDレーベル業者様より過去作品のリマスター依頼案件がある。その多くはマスター音源がレコードのみというものだ。更にそのほとんどが60年代~80年代のレコードを元にデジタル化→ノイズ除去→リマスター(音質調整)というプロセスとなる。(過去リリースはコチラと、コチラと、コチラを参照)。

リマスター依頼ということは、オリジナルの質感を踏襲しつつより聴きやすく高音質にすることが目的だと理解してるので、レコードを取り込む環境が重要になる。当ラボではご存じの通り高品質な機材やケーブルを使用し、より高度なノイズ除去処理を行うことで高音質化を図っている。高音質化といっても基準が無いので、当方としては市販のリマスター物で音質が良いものを参考にしたり、依頼元レーベルのリマスター物を参考にするが、前述のプロセス最終段階音質調整のほとんどはプラグインソフトで行っている。これでも十分な結果は得られるが、扱うレコードが古い物の場合もう少し音に厚みが欲しい時がある。そこでかけ録りという手法を試したくなったというのが回答だ。

ちなみに、、、以前DJミキサーMODEL 1.4のEQやDRIVE(ハーモニクスディストーショ効果)という機能を利用しかけ録りしてたことがあるが、効果がイマイチだったので利用しなくなった。現在AMARIでADする前段階でMANLEY : NU MUを通しているが、これもかけ録りである。当ラボではLP、EP、12インチシングル、カセットテープ、さまざまなジャンルすべてに適応できるスイートスポット的な設定でかけ録りするが、ダンス系は曲やジャンルによって微妙に設定を変える場合がある。このかけ録りはMODEL 1.4よりも効果が明らかなので、NU MUは手放せない機器の一つだ。

MANLEY NU MU
MANLEY NU MU

さて、前置きが長くなりましたが、今回お借りした3モデルについて当ラボ業務限定使用法、つまりレコードかけ録り結果を簡単に紹介するが、AD+HEDDはAD機能もあるので、AMARIと比較した結果のみ紹介します。AMARI≧HEDD>AD+という結果です。やはりAMARIは良いです。HEDDも良かったが、プリアンプ→NU MU→HEDD→AMARI→PCの流れで、HEDDAMARIをAES接続しなければならず(AD+も同様の接続)、音質的に大きな差が無い場合AMARIのみでOKという結論でした。

早速各モデルでかけ録りしてみた。プリアンプの後段NU MUの設定は固定、録音レベルはプリアンプで調整した。


Dangerous Music CONVERT-AD+
Dangerous Music CONVERT-AD+

まずAD+で試す。プリアンプ→NU MU→AD+→AMARI→PC、ADはAD+でAMARIはDD(デジタルtoデジタル)担当となる。まずトランスフォーマースイッチを押してみると、わずかに音が変化したが、音量を絞った状態だとわかりにくい。どのように変化したか?ん-、少し音が太くなったような、厚みが増したような。荒々しくヘビーな感じではなく、わずかに熱量が上がったような感じとしか言えない。これは私が望んでる効果ではない。明らかに効果が薄いので、右端のX-FORMERツマミを時計回りに回してみた。

トランスフォーマースイッチを押すことでX-FORMERツマミが有効になるようだ。ぐいぐい上げてみると音圧が上がっていく。高域と低域の明瞭度が上がり音の輪郭がはっきりする。半分の12時あたりで効果は感じられたが、さらに上げていくとアグレッシブに音が前に出てくる感じ。派手ではないが確実に音が厚く音圧が上がる。違和感なくスムーズなのでなかなか気持ちがいい!これはなかなか良いではないか!ダンスミュージックなどはフルに上げても問題ない。痛々しさはなく自然な躍動感がある印象だ。半分の位置であればどのジャンルでも問題なく使えそうだ。ただし、これだったらNU MUでも似た感じは出せるかな?ADはAMARIが優勢なので、トランスフォーマースイッチX-FORMERツマミの効果だけで、AD+を導入するメリットは無いかな。。。。というのが結論だが、MODEL 1.4DRIVEツマミとは違って、荒々しさなくスムーズな音圧UP+明瞭度アップ+パンチ力付加が実現できる点は重宝しそうだ。spdifAES端子のついてるDACを持ってる方で、優れたADコンバータと2ミックスにX-FORMERのパンチを求める方にはお勧めだと思います。ちなみに、言葉で表現するとかなり音質変化あると思われがちだが、少なくともAD+は言うほど極端な変化は無い。わずかである^^。


crane_song_hedd_quantum
crane_song_hedd_quantum

続いてHEDDで試す。これはAD+と違い調整つまみが3つある。音に変化を加えるDSP機能だが、音楽用語で言うサチュレーション効果を与えるものらしい。サチュレーション効果とは?わかりやすく書くと、アナログ機器など真空管やテープを通した時に生じる暖かな自然の歪みのことで、歪みによって得られる倍音成分が、音に厚み、暖かさ、ツヤを与え存在感のある音に変化させるというものだ。

まず接続から。プリアンプ→NU MU→HEDD→AMARI→PC、ADはHEDDAMARIはDD(デジタルtoデジタル)担当となる。サチュレーション効果の難しい話はさておき、DSP効果を試してみよう。大きな緑のツマミ5つの左端と右端はサンプルレートとADのプロセスを設定する物なので、それ以外の3つのツマミ左からtriode (三極管)、真ん中pentode(五極管)、analog tape emulation(アナログ テープ エミュレーション)を回してみた。なるほどー!サチュレーション効果絶大です!triodeはフルに回しても効果は控え目だが、pentodeとanalog tape emulationの効き目はかなり強い。全てのツマミを上げても音が破綻しないので、ついついやり過ぎてしまいそうだが、私が試した中ではpentodeとanalog tape emulationツマミを12時~2時の辺りがスイートスポット。程よいサチュレーション効果が得られた。そうそう、私が求めていたのはこれ。サチュレーション効果なんですね^^。

MODEL 1.4の粗い音ではなく、クリーンかつ「厚み」「暖かさ」「ツヤ」が加わった音だったんです^^。HEDDやばい!ADの精度もAMARIに引け劣らず、DSP効果も素晴らしいとなれば導入意欲も湧くのだが、、、、AMARIがあるのに追加でADコンバータは不要じゃないか?ということと、HEDDの価格がネックである。とにかく高価である。世界情勢の悪化や円安の影響で海外物は値段が高騰するばかり。HEDDも例に漏れず価格が上がってる。サチュレーション効果のみに65万円は出せないと判断。トータルクオリティは最高レベルのHEDD、DSP調整範囲が広く音質やサチュレーション効果も素晴らしいので、高品質なDACをお持ちの方で予算が潤沢の方にはお勧めの製品です。ちなみに、HEDDのDSPは効きが強めなので、最終マスタリング用途の場合、ツマミの回し過ぎ要注意。


SSL-Fusion
SSL-Fusion

続いてFUSIONで試す。いよいよ真打ち登場だ!AD+HEDDのデモの後、AD機能不要などモヤモヤしていたが、生粋のアナログアウトボードが私の求めてる物だということが見えてきた。ということで真打ちとした^^。FUSIONは見ての通り調整つまみがたくさんあり、音の入り口から出口までに6つのアナログツールが並んでいる。各ツールはINボタンでon / off可能なので、必要なツールのみ使えばよい。

左からVINTAGE DRIVEVIOLET EQSTEREO IMAGETransformer(トランス回路ボタン)、とりわけ当ラボで必要なのは4つのツールと推察。

VINTAGE DRIVEはSSL独自のノンリニアサチュレーション回路であり、ミックスに強さとまとまりをもたらします。

↑サチュレーション効果が期待できる↑

VIOLET EQは、ローエンドの量感とハイエンドの輝きをすばやく調整できるように、SSL伝統のE Qから周波数と応答曲線を慎重に選定した音楽的で直感的なEQです。

↑音質微調整重宝必至↑

STEREO IMAGE回路は、Fusion 内でMid-Side処理を可能にします。

↑端的に言えば音の広がりを調整できるツール↑これは私が必要とする効果にプラスアルファとなる予感↑

Transformerはカスタム設計の回路。 この回路にはいくつかの効果があります。トランスおよび周辺の回路はローエンドの倍音成分の追加と、ごくわずかで好ましい高周波帯域の位相シフトを追加します。さらにサウンドに絶妙な「重み」 が加わります。

↑これはAD+のトランスフォーマースイッチと似たツールか?押したままで良いだろう↑これは期待が高まる↑

まず接続から。プリアンプ→FUSION→NU MU→AMARI→PC、NU MUの位置を入れ替えるのがベターと判断。早速各ツールで試してみたが、期待通りの働きをしてくれそうだ。つまりとても気に入った!FUSION売れてるらしい!噂に違わぬ重宝ツール!これはいろんな用途で使えそう。かけ録りはもちろんだが、リアルタイムレコードリスニングも楽しめそうだ。FUSIONについてはニュースコーナーの新たな投稿で紹介する予定なので、次回に続く

以上3機種の試聴結果など簡単に紹介しました。個人的にかけ録りはあまり良いイメージは無いが(汗)、特殊な用途(レコードのデジタル化)には有効ではないかと思う。すでに完成されたレコード、特に60年代~80年代物の音に厚みを持たせる方法、かけ録り音源を元にプラグイン微調整すると、仕上がりが良いんです^^。リマスター担当業者に音源を提供する場合は、かけ録りしないほうが良いかもしれないが、信頼を得てる場合ほとんどがお任せなので、逆にかけ録り音源の方が評価高かったりする。先日もレコードの取り込みとノイズ除去の案件でかけ録りしたものを納品したが、高評価いただいた。自信を持って取り組みたい。かけすぎ注意ってか、既に業務でかけ録ってるし。

最後に、懇意ショップRのS店のTさんには大変お世話になりました。懇切丁寧な対応にも感謝です。当ラボのクオリティアップに大きくつながる大変有意義なデモ試聴でした。