早速USBケーブル比較レビュー後半戦!前回は、ノーマル、AIM、Orpheus、Nordostの4種類を聴いた感想と、観光地の写真がどのように見えたか、USBケーブルを私の目とし、写真を音楽ソースに例えて表現した。音質の変化を言葉で表すことが難しいので、写真の見え方の変化を例に用いたが、今回もそれに倣って同様の表現としますが、結果的にテキスト量多めになりました。よろしければ最後までお読みください。
では早速ですが、Jorma USB referenceケーブル(以下Jorma)に変更してみる。一聴して出音が変化したことがわかる。情報量が増えたのか?ノイズフロアが下がって元の音が前に出たのか?私が聴いた感じでは前者だと思う。Jorma Designのケーブル(インコネとSPケーブル)は過去に使用したことある。中間グレードのUNITYを基準に、ハイグレードのORIGO、超ハイエンドのPRIMEがラインアップされてるが、自分が使った印象は、上のグレードに行くほど脚色感が強い。嫌味なく音楽的表現を損ねないところが素晴らしく、暖色系の温かい音質で、ただただ良い音で音楽が楽しめる印象だった。
今回のUSBケーブルもJormaのハイエンドケーブルと同系の印象を持った。Nordostで聴いた時も聴き慣れた作品を色々聴いてみたいと感じたが、Jormaはそれ以上に強く思ったので、時間の許す限り聴いてみた。数時間だったが充分Jormaの情熱を感じることができた。何をどうしたらこのような質感になるのか想像もできないが、間違いなくこのケーブルを通るデジタルデータの音は変化していると強く感じる。芳醇とか、麗しいとか、そんな形容が思い浮かぶ。聴いててうっとりする^^。
これは欲しいと素直に思った。Jorma USBケーブルを通して過去に聴いた様々なお気に入りの作品を聴きたい。お気に入りじゃない作品も気に入るかもしれないと妄想する。はて?録音用途でこれはどうなの?ふと、我に返る。。。嫌味は無いにしろ脚色感が強いことは明らか。Jormaで録音しJormaで再生するデジタルファイル、良い音であることは間違いないが、脚色感が精神衛生上よくないよ!と録音側の黒い悪魔(白い天使)が囁く。そうそう、リスニングには良いが録音となると話が変わってくる。各コースの基準となるレコード針で再生されるソースを、クセの少ない機器やケーブルでデジタル化する私にとって、色濃い脚色は邪魔になる。Jormaのクセ(魔力)はまさにそれに当たるが、それを差し置いても欲しいと思わせるJorma、麻薬的な常用性があるJorma、恐ろしいケーブルである。。。妖美という言葉がぴったりだ!
衝撃度の大きさを物語るテキスト量である。Jormaの魔力が筆を走らせる。。。って、相変わらず表現へたくそで恐縮です。
Jorma USBケーブルで写真を見てみよう。色彩、明瞭度、明るさは独自の質感が付与され、明らかにアップデートされている。さらに見せたい部分がより強調され、メリハリのある色合いで見るものを引き込む。撮影アングルは変わらないが、カメラの設定、撮影時間帯、撮影者が変わったと思わせるほど写真のグレードが上がった感がある。おそらくフォトショップで究極の加工を行ったのだろう。この地に訪れたい衝動よりも、写真に惹かれいつまでも眺めていたいと思わせる。Jormaはそんなイメージ。
続いてCROSS POINT NEW XP-DIC/USB EN SE(以下CROSS)と行きたいが、CROSSはデモ貸し出しができなかった。しかも4月頃リリースされた製品がわずか1ヵ月ほどでマイナーチェンジをするという某店からの情報。某店には近日中に新製品が届くとのことで、某店の担当者(以下Tさん)のレビューを元に導入候補とする。Jormaを聴いた時点で当ラボで導入する候補はNordostかJormaかだったが、TさんとのやりとりでCROSSが候補に挙がり意外とダークホースなのでは?と位置付ける。というのも以前より気になっていたCROSS POINTというメーカー。クセがなさそうというのが第一印象。もちろん数少ないネット情報とTさんの情報から印象付けた。もしかして録音メインの当ラボにはCROSSがふさわしいか?
自宅デモ無しで導入はハイリスクだが、いろいろ情報を得るにつれCROSSに惹かれていく。逆にNordostの派手さやJormaの濃厚さが録音側には邪魔になるのではと危惧し始める。言ってしまえば両方とも脚色感は強い。特にJormaは濃い。こうなると脚色のない、まじめな音で評価を高めてきたCROSSが最有力となるのは必然だったのかもしれない。このタイミングでTさんのレビューが届き、当ラボで必要な条件がそろってることが確認できた。最終的に直接電話でお話をうかがったときに、わずかな期間でCROSSがマイナーチェンジした理由を知った。これが導入の決定打となった。マイナーチェンジした理由は書けないが、導入する意義は十分伝わった。
届いたCROSS USBケーブル、100時間ほどのエージングを経て、リファレンスレコードを録音した。ここからはCROSS録音音源ファイルと、他USBケーブル録音音源ファイルの比較となる。例えばCDリッピングファイルをPCで再生する場合、USBケーブル変更で音の変化は非常にわかりやすい。録音ファイルはそれよりもわかりにくいが、DAWソフト上に各音源を並べ、リアルタイムで比較すると違いが分る。早速NordostとJormaとCROSSで比較してみた。ちなみにこの3モデルを導入候補としたので、Orpheusは比較対象から外した。
NordostとJormaは色濃く個性が出ており、派手なNordost、妖美なJormaに対して、CROSSはどうだろうか?エージングの段階でわかっていたことだが、極めてまじめな音と感じた。二大巨頭(NordostとJorma)のレビューで述べたような、高揚感を掻き立てる形容詞は思い浮かばないが、確固たる基本性能を備えており、定位、位相、音場、音像の安定と低ノイズフロアのおかげで、各楽器が奏でる音の関わり合いがわかりやすい。ノーマルUSBケーブルのごちゃごちゃ感がなく、二大巨頭のように脚色加わる感じなく、不要な響きをそぎ落とし忠実な表現、再現に徹してるように感じる。ここでAIMとも比較してみたが、脚色なく忠実な再現は同傾向だが、基本性能の違いからか音の空間表現が違う。CROSSは雑味無く各帯域バランス良く脚色が無いためか、ストレートに演奏が目の前に広がる。ふさわしい形容詞は?強いて言えば力強い!である。演出や脚色のような無理やり感は無く、基本性能の高さが曲の持つエネルギーを最大限引き出してくれる。質実剛健という言葉がぴったりだ!
CROSS USBケーブルで写真を見てみよう。AIM USBケーブルで見てた写真がなじみのものでオリジナルとしてきたが、実はそうではなかった。CROOSで見た写真と比較すると、AIMは微妙にくすんでいる、全体は明るいがくすんでいるのだ。わずかなハレーションが写真全体に影響を及ぼしてるようだ。にわかに白濁してるようにも見える。CROSSで見るとハレーションの影響がなくなり、本来の写真が見えてきた。これぞリアルな瞬間をとらえた写真だ。AIMだけで見てもわからない部分であった。他のUSBケーブルの時も鮮やかさや鮮明度に意識が向いて、明るさをプラスイメージで受け止めていたが、実はわずかなハレーションだったことがCROSSで見えてきた。ただし、Jormaは明るさも独自の質感だったので、ハレーションには当てはまらない。Nordostは鮮やかさやメリハリ効果が勝っており、これまたハレーションには当てはまらない。CROSSで見る写真は独自のカメラ設定やフォトショップの加工も感じない。その地の一番きれいな時間帯を最も美しい状態で収めている。いつまで眺めても飽きの来ない写真でありつつ、その地を訪れたくなる魅力を兼ね備えている。CROSSはそんなイメージ。
さて、後半戦のテキスト量とあてがう時間は予定を大きく超えてしまったが、それだけJormaとCROSSへの思い入れが激しいということをご理解いただきたい。試聴の順番からNordost、Jorma、CROSSへと導入候補が推移し、揺らぐ気持ちを描いてきたが、最終的に自宅デモ試聴を行わなかったCROSSを導入した。録音メインの当ラボにとっては大正解であった。こだわり抜いて選定した機器類からの音楽情報を、最終段階で色付けしPCに送るのは本末転倒である。CROSSの選択は必要必然だったわけだ!
総括
最終的にCROSS POINT NEW XP-DIC/USB EN SEを導入したが、ノーマルUSBケーブル(AMARI付属品)以外はいずれも基本性能が優れているので、安心して使える製品としてお勧めしたい。特にAIM SHIELDIO UA3はそれなりに古いモデルだが、現在でも通用する素晴らしい製品だと感じた。ノーマルとの差が歴然だったことが衝撃だ。AIMを基準に、Orpheus、Nordost、Jorma、CROSSと比較してきたが、リアルサウンドを求めるならAIM、リアルサウンドに少し色を付けたいならOrpheus、ハイエンドな世界を覗きたいならNordost、別次元を望むならJorma、超リアルサウンドはCROSS。録音業務最優先のレコードデジタルラボは、CROSS POINT NEW XP-DIC/USB EN SE一択である。
雑感
今回USBケーブル変更に伴う音質の変化を、やや大げさな表現で書いてきたが、実際のところ音質の違い(差)(変化)は僅かである。僅かといっては元も子もないが、さもすれば何かしながら聴いていたら気付かないような違いである。流れる音楽と真剣に向き合い対峙することで僅かな違いが見え、それが好みの音質となった時に喜びを感じることも一つのオーディオの愉しみである。それを伝える手段として、やや大げさな表現になってしまうことはご容赦いただきたい。ある程度オーディオに精通された方には、ケーブル1本による音の変化が僅かであることはご理解いただけると思うが、人それぞれ感じ方が違うように伝える表現方法も異なるので、今回自分なりにわかりやすく違いを表現してみた。ちなみにUSBケーブルを変えることによる音の変化は、イコライザーやエフェクターを通して得られるような変化ではない。
余談だがプリアンプMODEL 1で、EQやフィルターで好みの質感で聴くことも楽しみの一つである。変化を愉しむことの本音を言えばJorma USB referenceでいろいろ聴いてみたい。この質感はやばいです^^
レコードデジタルラボ業務最優先でCROSS POINT NEW XP-DIC/USB EN SEを選んだが、過去使用した機器やケーブルで、脚色が強いものを排除してきた流れで考えれば当然の結果だ。しかし、、、それを度返ししてでもJormaが欲しいと思ったことは事実。。。。そう思わせるほどJormaの音は衝撃だった。録音業務抜きだとどちらを選ぶかと問われればJormaを選ぶ。この場合Crossのデモ試聴しない前提だ。JormaとCROSSデモ試聴した上でどちらを選ぶか?非常に悩むだろうが、リスニングで新たな発見や新鮮さを求めるならJorma、飽きの来ない堅実な音質を求めるならCROSSを選ぶだろう。実にもどかしい回答だ(汗)。このレビューを書きながらも常にJorma USB referenceのことがちらつく(笑)。
最後に
USBケーブル比較レビュー前半で少し触れたが、今のタイミングで複数のケーブル比較ができたこと、最終的に最新のCROSSがリリースされ導入決心できたこと、本当に良かったと思う。高音質化に近道はない。オーディオで高音質化を図るなら、小さなことの積み重ねが大切である。アナログ段階の(PCに送る前段階)機器がようやくまとまったタイミグで(機器やケーブルの選定)、デジタル最終段階で(USBケーブルの選定)CROSSに出会えてよかった。次回レビューはCROSS POINTのインターコネクトケーブルかBNCケーブルか、いずれが先か現在悩み中^^