さて、今回はKORGのNu-1について衝撃を受けたことをご報告します。Nu-1は以前から興味があったものの、いろいろ疑問があったので自宅デモすることなく今に至っておりましたが、知り合いのご厚意で2時間ほど自宅デモする機会に恵まれました。当ラボに導入する場合DSD録音とプリアンプとして使うのみとなるので、今回は時間が無いのでプリアンプ機能に絞って試してみました。(下記画像でNu-1の上に機器を置いてますが、傷がつかないようクッション材を敷いております)
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今回は時間が限られてるので、プリアンプとしてのNu-1を試してみます。その前にレコードをパソコンに取り込む流れを簡単に説明します。当ラボではフォノイコライザーからのソースをDJミキサーまたはプリアンプで適正音量に調整し、ADコンバーター介してパソコンに録音します。今回はプリアンプの箇所にNu-1を設置し試してみます。
LPレコードの1曲を録音します。まず通常の流れで録音します。今回はハイエンドDJミキサーのMODEL 1をプリアンプとして使用。この通常音源をAとします。続いてプリアンプをNu-1に変えて録音!の前に大音量でNu-1の音を確認!なんだか躍動感が半端ないです!なんだこれ!レコードをリアルタイムで聴いてるがマスタリングされたような音だ。音圧が間違いなく上がってる感じ?ちなみにNu-1はプリ機能を使う場合のみ、本機に搭載されている真空管を介すことができるらしい。Nutubeという独自の真空管だ。Nu-1では切り替えつまみがあって、真空管機能OFFと真空管効果を3段階に切り替える1、2、3の設定がある。
話を元に戻そう!もしかしてこの真空管機能がオンになってるとか?いやいや、OFFである。。。一聴するととてもメリハリがあっていい音に感じるが、、、ついでに真空管効果も確認してみる。切り替えつまみを1にする。ギョッ!さらに明瞭度と音圧が上がった!なんだこれ!もう一段階強めの2に切り替えるもさらに強調されて本来のレコードの音ではなく、少し残念なリマスターCDのような音になった。。。まあ、これはソース次第で切り替えればよいのであろうと理解し、真空管OFFで早速録音してみた。この音源をBとします。続いて真空管効果ON状態の1で録音。この音源をCとします。真空管効果2は試すまでもないと判断。録音モニタリングの段階ですでに嫌な予感。過去にも同様の経験があった記憶がよみがえる。とりあえず下記が録音した波形上からA、B、Cを並べたもの。
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当ラボではレコードをPCに録音する場合レベルを-6db~-5dbとしている。Aはヘッドルームが確保された一般的な波形です。Bはリミッターをかけたような波形。Cはリミッターのピークが少し持ち上がり、ダイナミックレンジも少し狭まった状態。これ、A以外はコンプレッサー、リミッターが効いちゃってる波形ですね。これはいったいどういうことなのか?とりあえずもう少し波形を拡大してみよう。↓
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はいはい。BとCは間違いなくコンプレッサーとリミッターが効いてますね。真空管効果あるなしにかかわらずこのようなエフェクターが効いたような音になることは意図的なのかな?あえてこのようなメリハリの音が出るように設計してるのでしょうか?レコードソースに限らずCDプレーヤーを接続しても同様の音になるのであれば、ちょっと問題ありかもしれないですね。リマスターCDを再生するとうるさくて仕方ないような気がするんですが、ここは試してないので何とも言えません。入力されるソースの音量によって変化するのでしょうか?いやいや、Nu-1のヴォリュームノブで音量調整してるので、この結果がこの波形です。
コンプリミッターが初めから効くなら、ヘッドルーム関係なく0dbあたりまで音量上げて録音してみてはどうか?真空管効果なしで早速音量上げてみたが驚きの現象が、、、、ヴォリュームノブを上げても録音レベルが上がらず音量の低い部分の音がどんどん大きくなる。つまりダイナミックレンジがどんどん狭まり、ピークが変わらないので波形が海苔状態になることが想像できる。音量上げれば上げるほどコンプが効いてくる状態だ。リミッターのピークが変わらないので、音圧だけが高くなり聴いたこともない、まさに音のカオス状態になった。。。音圧の低いLPからディスコ系の12インチシングルに変えてみても結果は同じ。以下がその波形です。↓
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横方向の時間軸は同じだが、縦方向の波形の山が明らかに異なります。上が通常録音(MODEL 1)、下がNu-1真空管なし。Nu-1のヴォリュームは相当上げているのだが、ピークは-6db辺りです。これ以上ヴォリュームを上げても波形の密度が濃くなる一方。なぜこのようになるのか、私にはまったくわかりません。この結果からNu-1のプリ機能は、音量を上げるとある地点からコンプ、リミッターが効いてきて、さらに上げると音量は上がらず音圧が上がっていくという仕様のようです。こんなので大丈夫なのかな?今回録音音源の波形を見れば一目瞭然ですが、それなりの音量で聴けばこの違和感(あえて違和感とします)に気づくはずです。
期待してただけにこの結果に衝撃を受けましたが、少なくとも当ラボでNu-1を導入することはなさそうです。音に機器の色が乗っかるという表現を使いますが、Nu-1のプリ機能は私にとって音の個性が強すぎのようです。Nu-1は多機能なので、その他の機能は試してないので何とも言えませんが、これ以上言うことはないです。ってか、Nu-1のレビューって少ないように思います。なんでだろう。。。さらに今回のような特殊な検証は皆無なので、参考になる方もごくわずかだと思いますが、何かのお役に立てれば幸いです。そして今回デモ試聴に協力いただいた知人のS君には改めて感謝いたします。
今回の検証はかなり衝撃的でしたが、実は過去にも同様の衝撃がありました。フォノイコライザーを購入する際に、複数のハイエンド機器を自宅デモしましたが、Burmester 100 Phono EQ amplifierとVPS / Nagraもレコードソースにコンプ、リミッターが効いておりました(VPSは本体トランス機能on状態のみ)。一聴時はその鮮烈な音に衝撃をうけますが、録音波形を見るとさらに衝撃です(汗)。本来のレコードの音ではないんですね。思いっきり味付けされてます。